防災井戸

「防災井⼾」とは?

内閣府の首都直下型地震等による東京の被害想定によれば、ライフラインの復旧目標日数は、『上水道』で30日となっています。過去の大きな災害では、私たちの生活にとってとても重要な『水』のうち、『飲料水』は災害救援物資などで配給されるので不足したことはほとんどありません。しかしトイレや洗浄水などの『生活水』は必ずと言ってよいほど不足するのが現状です。

このため災害発生時に『生活水』として利用する地下水を確保するための『防災井戸』が2011年の東日本大震災以降、さまざまな地域で見直されるようになっています。

全国さく井協会北陸支部調べでは、北陸3県の防災井戸は、富山県に11箇所、石川県に18箇所、福井県に19箇所しか整備されておらず、いざという時の備えが十分とは言えない状況にあります。

世帯人員別1か月あたりの平均使用水量

世帯人数使用水量
1人8.1m³
2人14.9m³
3人19.9m³
4人23.1m³
5人27.8m³
6人以上34.1m³
(出典)東京都水道局「令和2年度生活用水実態調査」をもとに全国さく井協会北陸支部作成

家庭での水の使われ方

(出典)東京都水道局「平成27年度一般家庭水使用目的別実態調査」をもとに全国さく井協会北陸支部作成

最近の地震の上水道の被災状況

地震名発生日地震規模(M)最大震度断水戸数最大断水日数
阪神・淡路大震災H7.1.177.37約13万戸約3ヶ月
平成16年 新潟県中越地震H16.10.236.87約13万戸約1ヶ月
平成19年 能登半島地震H19.3.256.96強約1.3万戸13日
東日本大震災H23.3.119.07約230万戸約5ヶ月
平成28年 熊本地震H28.4.146.57約14万戸約1.5ヶ月
令和6年 能登半島地震R6.1.17.67約13万戸2ヶ月間断水と約1万8000戸の断水が長期化

「井⼾」は地震に強い︕

地下構造物は地震の揺れに強いことで有名です。図のように、建物は慣性力により地震の揺れに対して逆方向の力がかかり、激しく左右に揺さぶられると上下でねじれが発生して倒壊してしまいます。一方で、地下構造物は周辺の地盤と一緒に動くため、揺れによる損傷が地上の建物より少ないのです。2011年の東日本大震災では、「最大震度7」の強い揺れにみまわれましたが、津波による被害を除けば、約95%の井戸が機能維持、もしくは短期間で機能回復していたことから、災害時の「生活水」の確保にとても有効であることがわかりました。

地震時に地上の建物は、地震の揺れより遅れるため、一部に引張や圧縮の力が働き壊れやすい。井戸などの地下構造物は、地震時に地面とともに動くため、壊れにくい。

地上の建物の揺れと地下構造物の揺れ

「防災井⼾」があれば…

令和6年1月1日に最大震度7を記録した『令和6年 能登半島地震』では、最大約3万人の避難者や約13万戸が断水するなど、甚大な被害が生じました。地震発生から2ヶ月が経過した3月時点でも、約1万人が避難、約1万8千戸の断水が継続しており、避難者の飲料水や生活用水の確保が困難な状況が続いています。ほとんどの避難所では、国や地方自治体による応急給水で飲料水は賄うことができていますが、洗濯やトイレに使用する生活用水が不足している状況にあると言えます。
断水が続く能登では、かつて使用していた「どうの井戸」と呼ばれる手掘り井戸(深さ5~6mほど)からバケツで地下水を汲んだり、地すべり対策としての水抜き孔から湧出する地下水をパイプで 避難所まで引水し、生活用水として利用している状況を目の当たりにしました。 もし避難所に「防災井戸」があれば、生活用水の確保がここまで大変な状況だったのでしょうか。

輪島市内の被災状況
輪島市内の被災状況
珠洲市内の被災状況
どうの井戸
水抜き孔から湧出する地下水を避難所まで引水

北陸3県にある主な防災井戸(手押しポンプ)マップ

全国における防災井戸の設置例
〜未来のほくりくを見据えた地下水の有用性と多様化〜

災害時の避難場所に指定されている学校や公園などに防災井戸の増設と普及を進めている。〔熊本市東区地内〕写真提供:(一社)全国さく井協会

東日本大震災や熊本地震の際に断水した地域では、地下水が貴重な水源となりました。近年は防災対策として、地下水の有用性と多様化を含めた井戸の役割が見直されています。未来のほくりくを見据えた安心で環境にやさしいまちづくりのために「防災井戸」設置の取り組みを進めております。

大震災後、大きな被害を受け地下水の大切さを肌で感じ、復興の一助として駅前復興広場に設置された防災井戸。〔牡鹿郡女川町地内〕写真提供:(一社)全国さく井協会
市民が集う多目的ホールに設置されたポンプ併設型の手押しポンプ。〔敦賀市東洋町地内〕
災害時の避難場所に設置されたポンプ併設型の手押しポンプ。〔羽咋市旭町地内〕写真提供:(一社)石川県さく井協会
消融雪井戸を活用し防災井戸としても使用できるよう設置された手押しポンプ。〔富山市富岩運河環水公園地内〕写真提供:(一社)富山県鑿井協会

発電機はあるけど、燃料が来ない……もしもの事態に備えましょう!

平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、震災後、燃料が不足する状況が長期間に渡り発生しました。この時、我々が設置した燃料を必要としない手押しポンプが被災者の皆様の飲料水・生活用水確保のお役に立ちました。

手動式深井戸用ポンプ
井戸口径100mm
最大揚程50m
シリンダー口径70mm
ストローク回数40回/分
揚水量0.84L/ストローク
揚水量2,000L/時
揚水管口径40mm
推奨揚程30m

手押しポンプ概略構造図

※衛⽣管理上、飲⽤不可です。

〜深井戸用〜

手押しポンプ単独

  • 避難場所等の⽣活雑⽤⽔、緊急⽤⽔、防⽕⽤⽔を確保できる。
  • 動⼒不要なので安⼼して使⽤できる。
  • 井⼾⽔位50m以内であること。 井⼾⼝径が100㎜以上、必要になる。

手押しポンプ併設

  • 避難場所等の⽣活雑⽤⽔、緊急⽤⽔、防⽕⽤⽔を確保できる。
  • 既存井⼾を利⽤した、併設型である。動⼒不要なので安⼼して使⽤できる。
  • 井⼾⽔位50m以内であること。井⼾⼝径が200㎜以上、必要になる。

〜浅井戸用〜

手押しポンプ単独

  • 避難場所等の⽣活雑⽤⽔、緊急⽤⽔、 防⽕⽤⽔を確保できる。
  • 動⼒不要なので安⼼して使⽤できる。⼀般家庭⽤井⼾にも設置ができる。
  • 井⼾⽔位7m以内であること。

手押しポンプ併設

  • 避難場所等の⽣活雑⽤⽔、緊急⽤⽔、防⽕⽤⽔を確保できる。
  • 既存井⼾を利⽤した、併設型である。動⼒不要なので安⼼して使⽤できる。⼀般家庭⽤井⼾にも設置ができる。
  • 井⼾⽔位7m以内であること。井⼾⼝径が100㎜以上、必要になる。

高揚程の手押しポンプの据付は、高度な技術とノウハウを要するため、
全国的規模のサポート体制の整った
さく井協会会員にご依頼をお願い致します。

私たちは、地下水資源の
持続的な活用を推進します

伝統的な地下水資源の持続的な活用に加え、地熱エネルギーの利用やCO2の地下貯留など、
さく井技術の社会的なニーズはますます高まってきています。
 地下水の適正な利用と管理をはじめとするさく井技術の発展と、
それを支える皆様が持続的に活躍できる環境が維持できるよう、
公共工事などの仕事の「量」と「質」の計画的な確保に向け取り組んでまいります

(076)267-3262
受付 9:00〜16:00(土・日・祝日を除く)

※事務所にお越しの際は事前にお電話いただけますとスムーズです。
※事務員が事務所に不在の際はお電話ください。